2/3(木)
キャンプからの移動が始まる。朝から「さようなら、ありがとう、また会おう」のハグが続く。お昼頃までには半数以上がテントをたたんで移動していった。ジュンさんたち日本山の方々も、昨日潤二さんの道場を訪ねた後、その足で山をを下りている。ウォークでの祈りを継続し、フラッグスタッフにある「ナバホ・ホピ・インディアン・リザベーション・リロケーション・オフィス」前に座り込んで、お断食しながらお太鼓を叩く予定だからだ。
ロバータがジャパン・キャンプのキッチンに来て、たくさんのことを話していってくれた。
「もう25年以上闘ってきた。生きている限り、この土地で昔ながらの変わらぬ
生活を保ち続けるし、ホピの伝統派もそう願ってくれている。日本に帰っても、ここで見たことの目撃者でいて欲しい。メディアからではなく、自らの目で見、耳で聞き、臭いを嗅いだことを真実として、そしてその気づきを生かして欲しい。」
「現在、3つのパワープラント(発電所)が西海岸に電気を送り続けており、石炭はオーストラリアや日本にも運ばれている。ナバホとホピの部族政府は、さらなるエネルギー開発を進めている。」
「聖なる動物である馬を取り戻さなくてはならない。10年前に最後のワイルドホース(野生馬)をBIAが奪っていった。馬は交通
手段でもある。また羊も頭数制限でBIAが奪っていくが、取り戻さなくてはならない。羊と一緒に暮らす中に祈りがある。」
「世界中の先住民の問題は、ここと同じである。聖なる土地として扱っていたものが、お金に変わってきている。」
「ここから取られたものは、破壊に使われることなく、調和に使われて欲しい。そう使われないよう見ることが、グレートスピリットから遣わされた私達の役目だ。私達がもしここから離れてしまえば、全ての破壊がもっと進むだろう。私達は全てのいのちのために闘っている。」
「共和党の大統領候補で元俳優のマッケイが大統領になったら、破壊は権益のためにもっと進むだろう。」
「私達は自然の法の中で生きている。私達は創造主の思いの中で生きている。私達に強制移住をさせられるのは、私達をここに置いた創造主ただ一人。」
「私達は全く自由に自給自足出来るし、なんの問題もない。しかし政府は移住させて、お金を払って何かに依存する生活にさせたいと思っている。」
「東海岸でセレモニーの時、女神の声が、マザーアースの声が聞こえたという。『私は本当に、とても傷ついています。私のこの気持ちを分かって下さい。あなた方一人一人が、心から祈って下さい。』と。」
これらロバータからのメッセージは、ビデオから起こして、後日ホームページにて正式に公開したいと思う。
残った28人の日本人メンバーだけで、すぐ裏にある周囲を遠くまで見渡せる高台に上がり、最後のクロージングの輪をつくった。そこは、周囲に様々に装飾された土器の破片が無数散らばっている、アナサジの住居跡であった。ディネの人からは、土器を手に取って見てもいいが、決してその場から持ち去る事がないよう教えられていた。日本から託された石と水を、日本とビッグマウンテンとの良きつながりがこれからも続くことを願って大地に捧げ、順番に最後のお祈りして、ウォーク隊は解散した。
ここから新たな旅が、一人一人のウォークが始まる。まだ若いミツ、カトケン、サトシ、スイツ、ケイコ、シンゴ、ヒロセ、アキーニ、カーコ、ヨウタ、ビワコらは、そのままビッグマウンテンに残る事にした。今後彼らは白人サポーター達に混ざって、サポートを必要としている長老達の家々に分散して滞在し、羊飼いを始め、薪割や水汲みなど、様々な雑務を行うことになる。中にはケイコのように、ディネ伝統のウィービング(織物)の勉強をしたいという目的を持つ者もいる。ここビッグマウンテンで、伝統的な生活を続ける最後のインディアンのおばあちゃん達と共に暮らすことは、サポーター自身にとってもかけがえのない経験となるだろう。また世界中に仲間が出来るし、なにより日本人も(世界中の人が)事態の推移を見守っているぞ、というアピールになる。今後、ビッグマウンテンでサポート活動を行う人を派遣するプロジェクトを、新たに立ち上げることになるだろう。
レンタカーの返却期限のこともあり、残る人を残してキャンプを引き上げた。帰る道すがら、何度も雲に虹がかかっていた。途中、ホピの村キョコツモビに差し掛かった際、実に象徴的に、東西南北の四方向に虹が出ていた。こんな虹を見たのは、もちろん皆初めてだった。思えば日本からずっと、虹に励まされ続けてきた。大鹿村での逆さ虹、日比谷での太陽の虹、そしてホピでの四方向の虹。奇跡のような虹をその都度見せてもらい、そして今また最後に見せてもらった。
ありがとう、グレート・スピリッツ。
ありがとう、グレート・ミステリー。
ありがとう、ファーザー・スカイ。
ありがとう、マザー・アース。
[文責:あきお]
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