デイリーレポート



1/29(土)快晴

 日の出の後、チャプターハウスでモーニングサークルをつくり、地元のプレジデント・セイモアさんが祈りを捧げ、昨日の終着点に移動した。すぐ脇には聖なる女性の河、リトル・コロラド・リバーがあったが、水はなく干上がっていた。渡る前にパイプとスタッフが並び、バヒが祈りを捧げ、厳かに歩き始めた。インディアンも河は道であり、神聖なものだと考えている。

 僕はバヒのパイプを持った。河を渡り、小高い丘のように土砂が積まれ崖のようにもなっている脇を歩いて行く。この土地の人達は核爆弾のウラニウム採掘をさせられ被爆し、広島・長崎の人と同じ苦しみを味わってきた。そしてビッグマウンテンと同じ強制移住問題に悩んでいる。日本から大地を踏みしめて歩いて来た我々が、大地と共に生きる人達が大地と切り放されないよう祈るその歩みが、そこにつながる多くの日本からの思いが、彼らとつながったことには大きな意味があると思う。我々に出来ることは共に祈り、自分達のコミュニティに帰ってから見たことを伝えることでしかないだろう。四つの方角から集まった様々な肌の色の者達が共に、大地やいのちのつながりの輪(聖なる輪)から離れ奪いつくすだけの、世界中に蔓延する現代社会のあやまった生き方に警告を発し、祈り続けなくてはいけないと思う。ビッグマウンテンはそのシンボルである。僕にとっては、かけがえのない生き方をインディアンの伝統から学んでいることへのささやかなご恩返しでもある。故・日橋さんや故・潤二上人など、先人達から受け継がれた祈りやご縁を実りあるものにするためにも。悲しみを?,! 受けとめ、今ここにいるわけを思い、歩むべき道を見、祈りを強く持ち、今、一歩一歩大地を踏みしめている。なぜかボロボロと涙が溢れてきた。後で知ったのだが、この涙した崖のような場所が、ウラニウムを露天掘りし未だに放置している問題の場所であった。これら露天掘り跡はそのまま放置されているため、雨水が溜まり地下に浸透していき、貴重な飲料水である地下水を汚染している。白人サポートグループが放射能検知器で調べた時は、最高レベルを表示したという話も聞いた。

 どこまでも続く地平線に、ディネの人達が住む家がポツポツと見えてくる。車で追いかけてきてドリンクやスナック、フルーツを差し入れてくれる人も出てくる。通 りがかりの車からクラクションが鳴り声援が飛んでくる。いつの間にか大勢の地元の人達が一緒に歩いてくれている。お昼のサークルでは60人になっていた。ハイウェイ89を東にハイウェイ160に入る。今日は26マイル(41.6km)というとんでもない距離を歩くため、最後はランを使って距離を伸ばす予定だったが、結局は歩き通 した。相変わらずの永井の‘馬’ぶりには恐れ入った。多くの声援を受けて勢いもつき、ランのつもりで高ぶらせていたエネルギーも抑えきれず、雄叫びをあげながら高らかに歌を歌いながら、多くの者が走っていた。ものすごいスピードのウォークである。驚いたのは、日本山の庵主さんジュンさんである。もうエルダーと呼ばれてもいいお年にも関わらず、走りながらお太鼓を打ちお題目を唱え、先頭グループにピッタリついて来る。息も上がらずお題目を唱え続ける上に、全くリズムが狂わない。さすが「ザ・ロンゲスト・ウォーク」(1978年2月〜! wa月まで行われたインディアンによる大陸横断行進。ワシントンD.C.には1万人以上の規模で到着した)を始め、数々のウォークを歩いてこられただけはある。ジュンさんをして「こんなに速いウォークはロンゲスト・ウォーク以来ですねぇ」と言わしめただけあって、相当気合いの入った思い出に残るウォークになった。坂道を登って丘の上に上がり町の中に入って行くと、駐車場に多くの車が止まっていて、一斉にクラクションを鳴らして歓迎してくれた。思わずジーンときてしまった。

 チューバシティは、メサ(砂漠に浮かぶ小高い台地)の上につくられた新しい町。この辺りでは一番大きく、ビッグマウンテンから強制移住させられた人達も大勢いる。チャプターハウスに到着する頃には、あたりは随分と暗くなっていた。地元のエルダーやお母さん、お父さん、子供達が大勢いる。ここで食事を振る舞ってもらった。

 宿泊は、元ナバホ・カウンシル(部族政府)のチェアマン(代表)だったピーター・マクドナルドさん宅。彼はナバホの近代化を進め、ホピと土地を分割し、移住をすすめた張本人だと認識していただけに、このご縁に驚いてしまう。彼は現在、敵対勢力から失脚させられ、暴力事件に巻き込まれて、高齢にも関わらず服役中なのだという。

 寝る前にメールを日本に送るべくトライしてみた。日本で壊れたノートブックを修理して持ち込んだのだが、あれこれ設定し直してもうまくゆかず、結局送れなかった。明後日からは電話もない携帯も届かないエリアに入るので、何とか今までの分を送りたかったのに残念だ。

 [文責:あきお]