デイリーレポート



1/28(金)快晴

 朝8:00、昨晩泊まった53人でモーニングサークルを作り、キャメロンのチャプターハウスを出発。車で昨日の終点に向かい、今日のウォークが始まる。さほど寒くなく、皆アウターを脱いでいる。始めの内は寒いが、歩き出すと暖かくなってくる。それでも手袋は必需品で、していても指先が冷たい。

 後ろを振り返れば、サンフランシスコ・ピークスがまだ大きく見える。その左には昇ってきた太陽が、右には沈みゆく月が、ほぼシンメトリー(左右対称。月は太陽に例えれば2:00ぐらいの位 置)になってある。東に太陽、西に月、南に聖なるサンフランシスコ・ピークス、そして真っ直ぐと北にのびるハイウェイの正面 には、まだ見えないがビッグマウンテンがある。

 このところ風邪が日本人の中に流行り始めてきた。結局アキーニはウィンドウ・ロックのメディスンマンの所に行き、ボブさんは飛行機の中からうなっていたアキーニの世話をしていて移ったらしく、ずっと元気がない。はやく回復して、そのヘヨカ(インディアンの道化師。トリックスター。何でも逆さまに振り舞う)ぶりで、みんなに笑いと元気を与えて欲しいものだ。江美ちゃんと深雪さんもダウンし、さすがにアメリカには゛子連れ狼号″を持って来れなかった石川親子も、奥さんがダウンしてフラグスタッフに残りっきりである。

 ワシントン州オリンピアの「kAOSラジオ」の取材があった。昨日取材のあったローカル新聞「ARIZONA Daily Sun」を買い求めてみると、第一面にトップ記事で日本山妙法寺のお太鼓を叩く姿が大きくカラー写 真が掲載されていた。しかしタイトルはといえば、"Looming confrontation"" Marching Navajo supporters not welcome by Hopis"で、キャプション(写真の説明文)には"Japanese nuns and monks march Thursday morning with a group of about 50 protesters along North U.S.89 as they begin a 137-mile trek to Big Mountain in support of Navajo families facing eviction on the Hopi Reservation." とあった。僕らが対決姿勢で、ホピに反感を買いながら、ナバホを応援しにビッグマウンテンに向かってウォークしている、といったところか。所詮、どこの国のマスコミもセンセーショナルに扱いたがる点は同じだ。我々が2/2に、ホピとディネの伝統派長老達とのパイプセレモニーを行う意味を理解できていない。部族政府が必ずしも民の意見を代弁していると限らないことを、また何百年も受け継いできた伝統的生き方にいかに背いているのかを理解できていない。しかしながら、大多数のアメリカ人の見方を代弁しているとも言えるわけで、複雑な問題だけに、的確な情報を伝えてゆく大切さを痛感した。

 お昼頃、ニューヨーク在住でフラッグからヒッチで駆けつけたケンが合流する。「週刊金曜日」とインターネットで知って、飛び込みでやって来た。アメリカ人を含め、インターネットで知って参加している人が意外に多いことに驚いている。コミュニケーションのデジタル化が確実に浸透してきている。でも大事なのは、バーチャルだけで終わらないことだと思う。夕方近くなって、キャメロンのリザベーションに入ってから、道行く人や通 りすがりの車から、大きな声で声援が飛んできた。地元からの歓迎はとても元気になる。3人の女性達や8人の子供達が、ウォークに飛び入りしてくれた。

 今日のウォークは約21.5マイル(34.4km)歩いた。峠が多かった日本を歩いてきた者にとっては、ずっと平坦なアメリカはとても歩きやすく、無理なく、速く、長く歩ける。今日一日で足にマメが出来たり、膝が痛くなったりした者も多いが、みんなこの速さと長距離にもかかわらず、頑張って着いてきている。もちろん無理することなく、もう歩けないと感じた者は、どんどん後ろに続くサポートカーに乗り込んでもいる。

 宿泊は昨日と同じキャメロン・チャプター・ハウス。今朝のアナウンスの効果 があって、夕食にはとてもたくさんのパンやチップス、野菜などの寄付があり、お金も$140程集まった。ベジタリアンが多く、様々なギャザリングに参加していて、フリーキッチンに慣れていて理解している人が多いと感じた。地元のお母さんが娘達を連れてフライブレッドを作りに来てくれた。とても美味しそう。でも僕とハルは昨日から断食中で食べれない。

 夜、地元のメディスンマン エルウッド・キャニオンさん(86歳位 、記録無いため記憶による 右写真左側、右はバヒ)と奥さんのジーンさん(85歳)、昨日来て下さったキャメロンのプレジデントのセイモア・ソー・ジュニアさんから、ここキャメロンにまつわる話をみんながじっくり聞く機会を得た。フラッグスタッフで話が出た、最も心配されたウラニウムの露天掘りの場所というのが、まさにここであった。なんという巡り合わせだろう。誰も、バヒすらも予想しなかった展開である。我々はこれからどこまで導かれていくのだろうか。アメリカに来て更に大きくパワフルになって、多くの人々や精霊と共に歩いて行くことになるのだろうか。はっきりしていることはただ一つ、日本と同じように、一歩一歩を祈りながら歩いて行くだけだ。

 [文責:あきお]


 メッセージの大まかな内容は以下の通り。

 多くの肌の色の人がいて驚いている。私も若い頃よくチューバシティまで歩いたものだ。長距離歩くと疲れるが、それ以上に気分は良くなるし、自分に自信がつく。

 1950年代に露天掘りされた場所は100以上に上り、未だにそれらピットは空いたまま。飲み水の汚染が深刻な問題となっている。ウラン採掘には多くの人が従事し、(広島・長崎に使われた原爆ではないが)当時は世界最高の爆弾が出来るから、露天掘りの仕事を誇りに思うべきだと教えられた。しかし次々に病気で倒れ、仕事を辞めたり引っ越して行った。医者に行っても原因が分からず、あちこちが悪くなってゆき、最後に大勢死んでいった。多くの人が未だに原因不明の病気で死んでいる。日本に放射能によって受けた病に効く良い薬があれば紹介して欲しい。人間が地球を傷つけるとしっぺ返しが来る。大地から掘り出すと、また病気になる。

 今自分達は、この土地を追われようとしている。アメリカ政府は、まずホピからディネに土地をあげて、次にディネからホピに土地をあげて、最後には全部取り上げたいと考えている。アメリカ政府がディネとホピの関係を悪くしている。現在この土地はフリーズされており(ビッグマウンテンと同じく、ホピ部族政府に分割され強制移住対象地で、その後企業にレンタルされる。移住が完了するまでは一切の土地利用は凍結されている)、家を建てることも、フェンスを建てることも、木を植えることも許されていない。自分達は何とか新しい家を建てたが、政府を恐がって家を建てられない人が大勢いる。飛行機で畑をつくったり家を建てたりしないか見回っている。同じディネを使って(頭数制限を理由に)家畜を没収している。年取っている人達が悲しみの中で亡くなっていくのが、とても悲しい。

 最近BIAが地図を作っているのを見た。ここからグランドキャニオンまで線が引いてあって、そこもホピとナバホに分割するらしい。そのことが分かってから、この辺りのコミュニティの人がワシントンのBIAに行ったが、また1000人以上の人が移住しなければならないという。弁護士を使って反対しようとしているが、結局はホピに分けるという話になってしまう。たぶんBIAやアメリカ政府はホピをコマーシャルに利用し、ホピを使って土地を分け、その土地を商業的に利用しようとしているのだろう。

 何もかも自給自足出来るようになることを、自分達の食べ物を植えたり、宝石を作って売ることを、政府はダメだという。グランドキャニオンでも売れなくなってしまった。政府やBIAがどんどん作っている法律は、人間にとって一番ひどいことだ。

 我々が今必要なのは、皆さんがやっている行進がつくる祈りのエネルギーだ。祈りのエネルギーが、未来を解決できる力をもたらしてくれる。それとリーダーシップ。誰か信じれて影響力のあるリーダーが必要だ。自分のコミュニティのために立ち上がる人。皆さんのように違う人のために行動し祈る人が必要だ。

皆さんはとても大切なことをしている。皆さんが今日歩いて持ってきた力と祈りは、ビッグマウンテンに住んでいる人に力と希望をもたらすだろう。

 皆さんが旅をしてどんなストーリーを自分のコミュニティに持ち帰ってくれるのだろうか、と思っている。この行進の後、コミュニティに帰ったらぜひ伝えて欲しい。この辺で起こっている問題はどういう形で終わるのか、人間関係がどういう形で終わるのかを。(エルウッド&ジーン・キャニオン)

 自分達の敵を許さなくてはいけない。そう出来れば、世界中のいろんな肌の色の人が、ホピの人とディネの人が、平和になることが出来る。平和に大地の上で美しい道を歩むことが出来る。新しい敵をつくることは、これから止めなければいけない。喧嘩しなくて、ワシントンの政府も一緒に働いて、自然界の法則を戻さなくてはいけない。

 皆さんの愛に感謝します。喧嘩しないで世界中のみんなが愛し合うことができますように。

(セイモア・ソー・ジュニア)

*余談だが、メッセージの後、メディスンマンとプレジデントはディネの伝統的な祈りの歌を歌ってくれた。後でバヒが、ディネのメディスンマンの歌はとてもパワフルなので、悪いもの(ゴースト?)も呼んでしまい、弱った病人についてしまうこともあるから、病人をスイートグラスでスマッジしろと指示を出した。

*メッセージ内容に関しては、意訳である。ビデオ記録してあるので、後日ホームページ上で正式な翻訳を発表する予定である。