デイリーレポート



1/26(水)雨のち曇り、時々雪

  朝、モーテルにバヒが来てくれて、全員でミーティングする。アメリでのウォークの名前は「SAVE BLACK MESA PRAYER WALK」(セイブ・ブラック・メサ・プレイヤー・ウォーク)。日本でのウォークがきっかけとなり、日本からのウォークを引き継ぐ形で、昨年末来日しているビッグマウンテンの先住民アクティビスト バヒ・キャダニーとフラッグスタッフ在住の白人サポーター ダイアンが中心になってオーガナイズされた。タイトルにあるブラック・メサは、肝心の石炭を露天掘りしているビッグマウンテン・エリア内の聖地。強制移住問題の発端であるこの石炭採掘の現場に今一度フォーカスし、レイプされ続けているこの女神が宿る聖地を守るための祈りの行進として位 置づけているのだろう。バヒからは、詳しいスケジュールやルート、各地の様子などについて説明があった。 1/31に予定通りブラック・メサ採掘現場に到着予定で、そこから強制移住区域となるHPL(石炭採掘に絡んでホピ政府に分割された土地。ナバホ政府に分割された土地はNPL)に入って行くのだが、様々な妨害を考慮し、ルートは一切明らかにしていないという。馬しか通 れない道を歩いたりもするらしい。

 ハルよりディネの部族政府のある地元ウインドロックで、ディネの伝統的な家ホーガンに電気・水道なしで住み、コンサルティングの仕事をしている日本人の中島さんから、昨日貴重なアドバイスがあったことが報告された。我々がやっていることは素晴らしいことで、ホピとナバホ両方の部族政府内でも多くの人達が賛同し協力を申し出てくれているが、ホピの土地を通 り、法律上立入禁止とされている強制移住区域内に奥深く入り、その土地に居続けているディネの人達がずっと住み続けられるよう祈って行進する以上、ポリティカル・ウォーク(政治的な行進)ではないと言っていても、BIA(アメリカインディアン局)やホピ警察を刺激している。また普段だと非暴力の平和行進ではそんなことは起きないが、2/1強制移住期限に合わせて動いているので過剰に反応しているらしく、場合によっては逮捕・即移民局・即強制送還という話も今回は十分有り得るという。このことは日本国内にいた時点で、既に参加者全員が折り込み積みだが、なるべくならトラブルは避けたい。アメリカでのピースウォークは通 常一切の許可をとらずに行進を続けるが、以前ニューメキシコ州でパーミッション(許可申請)がらみのトラブルが原因で暴力沙汰にまで発展したこともあったという。そこで急遽中島さんの配慮で、ホピ部族政府とチューバシティ(通 過する唯一の大きな町)の警察に対して通行許可申請(パーミッション)をし、今回ばかりは時間がないのでFAXで受け付けてもらえることになった。 また問題が大きく発展しないよう議員も動いてくれるという。

 この話がきっかけとなり、ウォーカーの中から様々な不安が吹き出した。かつてのウラニウム採掘に伴う残骸が放置されている所を通 過するのか(→キャメロン近郊がそうだが、どこがそうなのかは誰も知らない。地元で然るべき人に尋ねてみる)、石炭採掘に伴ってチューバシティの地下水が汚染されていることが議会でも問題になっている(→ミネラルウォーターを買う)、ブラック・メサでは石炭の細かな粉塵が舞っている(→日本でも大型トラックの排気ガスやゴムタイヤの細かなカスを吸ってきている。ウラニウムの残骸の件もそうだが、大人は自ら選んで来ているから良いとしても、連れてこられた子供に対しては責任がある)、アメリカに来てから熱を出して寝込んでいるアキーニをどうするのか(→フラッグスタッフに残る現地サポーターに預かってもらうことになった)、風邪など体調を崩した場合や物資の補給など本体と別 の動きも必要ではないか(→風邪など体調を崩した場合はフラッグに戻り体調を整えて、レッドレイクまでに合流する。それ以降の合流は難しい)、人や荷物が増えて車が足りるか(→15人乗りのバンを2台既に借りているが、始まればウォーカーの車が増えるだろう)、ぬ かるみを走ることになるので4WDが必要なのでは、食事の準備はどうするのか、など、至れり尽くせりだった日本とは違って様々な不安が皆を襲った。グループとして基本的な準備を整えた上で、後は自分の面 倒は自分が見る。ウォークはサバイバルが基本である。不安は溜め込まず、わずかな情報や問題でも共有し、みんなが一緒の輪にあることを確認する良い機会となった。

 夕方、フラッグスタッフ在住のサンダンス・ブラザー達の好意で、車で40分程走った郊外で、スウェットロッジに入る機会を持った。リードはリンディ、ファイヤーマンはカーリー。共にビッグマウンテンのサンダンサーである。ディネ・インディアン、地元白人サポーター、日本からのウォーカー、アトランタ・シアトル・ニューヨークなど全米中から集まった日本山妙法寺の市川庵主さんらグループなどの約30人が一緒に祈った。とても熱くて力強くて、深い癒しと祈りを分かち合う、サンダンスでのスウェットを思い出した。気持ちが引き締まり、やっとビッグマウンテンに来た感じがした。身も心も浄化され、祈りも新たに強くフォーカスされ、明日からのスタートの準備を整えることが出来たと思う。

 [文責:あきお]