1/25(火) 曇りのち雨
まだ暗い早朝5:30頃、アリゾナ州フォーコーナーズ・エリアの町、フラッグスタッフに到着する。モーテルが開く時間まで、目の前のハンバーガーショップ・ジャックに入る。昨日の昼、夜に続き、今朝もまたハンバーガー。移動中は他に食べたくても食べるものがなく、また安いために、どうしてもこうなってしまう。国内でのオーガニックづくしがウソのような偏食ぶり。腹は膨れるものの、食べた気がしない。そのうえ胃の調子がおかしい。
先日、米国の環境団体ワールドウォッチ研究所は「世界情勢2000」という報告書の中で、食べ過ぎやファーストフードの急増に伴う栄養の偏りにより、太りすぎが飢餓人口とほぼ同じ12億人もいて、史上最大の増加傾向にあると発表した。これはアメリカのみならずブラジルやコロンビアなどの途上国でも、それぞれ全人口の30%、40%以上が太りすぎだという。甘いもの、脂っこいもの、刺激の強いものと、現代人は味覚の欲求ばかりを増大させ、食産業は求められるままに(またさらに煽って)工場で大量
生産し続け、その結果アメリカではビア樽みたいに太った人なんてザラで、家でつくったり高いお金を出してレストランに行かない限り、ファーストフードしか食べるものがないという状況にある。ついに人間の欲望は、自らの体までも変えてしまった。そこにはいのちを頂くという考え方は微塵もなく、工業製品と同じ物としてしか見えておらず、ビタミン剤の普及ぶりからも分かるように栄養さえ補給できればいいという、非常にデジタルな考え方で食を捕らえている。日本人も「いただきます」「ごちそうさまでした」を忘れてしまったら、もう終わりだろう。
宿泊は「エコノミー・イン」というインド人経営のモーテル。交渉して一人$13となる。もちろんバス、ルームサービス付き。上出来です。
フラッグスタッフはヒッピーや学生、ニューエイジが多い、若々しくて小洒落ていてのんびりした町で、一般
的にはグランドキャニオンに行く町として使われている。僕らサンダンス(平原インディアンに古くから伝わる、聖なる祈りの儀式。ダンサーは4日間、飲まず食わずで、日の出から日没まで、いのちの木の回りで踊り続け、自分の血と肉を捧げる、とてもハードな儀式である。今では毎年夏、北米各地60カ所以上で行われていると聞く)に行く一部の者たちは、ビッグマウンテンから一番近い大きな町として毎年訪れている、勝手知ったる町でもある。しかし今回は全員が初めての冬で、キャンプも最低2日予定されているため、装備面
での不安が心配された。
フラッグの気温は日本の冬と大差ない感じだ。こちらで聞いたところでは、ビッグマウンテン・エリアは標高2,100mあるため、昼はシャツだけでいられるほど暖かいが、夜はマイナス10度以下になり、明け方はマイナス20度近くなるという。この温度差で体調を崩すと、風邪をひく原因となる。また、今のところ天気が良かったが、今週末は雪になるだろうと皆言っている。ビッグマウンテン・エリアは、道路はもちろん舗装されておらず、赤い砂の大地は、雪が降ると昼間溶けて、あたりは泥沼のようになってしまうという。しかしこの雪は、大地とそこに暮らす人々にとっては本当に恵みの雪である。冬の間にたっぷり雪が降って大地を潤していないと、大地は夏のあの灼熱の中、生き物を養ってゆけないのである。
今日は一日自由行動の日。部屋でひと休みして、皆、防寒具やレインブーツ、キャンプ用品などの買い物に出かけた。スリフト・ショップ(古着・古道具のストア。買い取ってもらうのでなく、リユースのためにタダでお店に渡すシステム)では防寒防水の本格的ブーツが$5、服が$1、フリースが$4、アウターが$6。キャンプ用品のサープラス・ショップ(専門用品を扱うディスカウント・ストア)では、メーカー品が日本の3割〜5割引き。アウトドアものは、やっぱアメリカで買うのが一番。安さに釣られてみんな結構買い物していたようだ。
スリフトに着いたら、とても大きな虹が地平線低く架かっていた。アメリカに来て最初の虹だ。大歓声があがる。このところ、ウォーカー全員がレインボー・シンドローム(虹過敏症)にかかっているかもしれない。
情報交換の場で、僕らの溜まり場の一つでもあるオーガニック・カフェ「マーシー」で、地元ノーザン・アリゾナ大学の見知らぬ
学生から「おまえたちビッグマウンテンに行くのか」と声をかけられ、「じゃぁ、パンを寄付するからぜひ持ってってくれ」と申し出を突然受けた。マーシーにアメリカでのウォークのチラシが貼ってあるのを見たが、降って湧いた話で、よく分からないまま彼の家に車でついて行くと、なんとも美味しそうなオーガニック・ブレッドが入った、バカでかい袋を2つ寄付してくれた。今回のウォークのことは、友達からのe-mailで前から知っていたようだ。彼は「Food
Not Bomb」(tel.520-213-8435)という世界的な市民グループに参加していて、彼らは世界中で反原発運動や平和運動の現場に食糧供給をしており、毎週1回公園で炊き出しもしているという。彼は「ウォークには参加できないが、食糧を通
じて支援するから、ぜひ頑張ってくれ」と言ってくれた。ありがとう! このアメリカの市民運動の層の厚さ、分業ぶりには、凄く感心してしまった。今回のようなウォークやピースギャザリングなどで、いつも大変なのがフードである。フリーフードをたやすくするこのようなシステムが、ぜひ日本でも立ち上がってもらいたいものだ。
[文責:あきお]
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