デイリーレポート



1/9(曇り)

  スウェットの参加者は私が予想していたより多く、スウェットは結局、朝から夕方まで20人づつ5回行われた。私は2番目。4ラウンドで1セット、1ラウンド終わる度に開かれる入口からは、真っ赤に染まった背中が見え、中からは叫びに近い歌声が響き、蒸気が立ち上る。

 1セットが2時間程かけて終わり、中から出てきたピカピカの人達の感情の波に圧倒される。私の初めてのスウェットは、汗と涙とよだれと鼻水にまみれて終わった。「スウェットはお母さんの子宮の中だから怖がることはない」という言葉に安心して祈れた。とても自分に素直になれ、さらけ出せた。後はうまく言葉にできない。この日はずっとボーッとしていた。他のウォーカーにスウェットのことを聞くと、それぞれ受け取ったこと、思ったことがあったようだ。

 昼近くになっていた。大鹿のサポートの人達が用意してくれていた食事をいただく。ウォークして痩せられると思っていたのに、たくさんのご馳走に毎回負ける。みんなサポートしてくれる人達の思いやりがつくってくれた空間で、とても良い出会いを楽しんでいる。私はラウンドハウスに戻り、ウォークの仲間と片づけをして、ぜいたくにも昼寝をさせてもらった。一時間足らずで寒さで目が覚め、ウォーク仲間と話をし、本を読む。ウォークを始めてから、毎日いろいろな事を考える。未熟ながらも一歩一歩、前へ進んでいる事を感じることができる。本当にうれしい。

 夕食後のミーティングで、自分がこうして歩けることは、周りにいる全ての人達のおかげだということと、サポートしてくれている方々も、ウォーカーと同じビッグマウンテンへの祈りを抱いていることを再認識する。みんなキラキラしている。とっても元気になる。ウォークの仲間と「明日、また歩くの楽しみだね」と話した。

 食事もせずにスウェットを進めてくれた方々、炊き出しを忙しい中してくれた方々、部屋を貸して下さった方々、カルチャーショックを受けた大鹿の元気すぎる子供達、そして私達を見守ってくれている大自然、ありがとう。明日からまた歩かさせていただきます。

[文責/矢向由季]


 朝4時半。スウェット・セレモニーの火をおこす。

 スウェット・セレモニーはラコタ民族(いわゆるスー族)の伝統儀式だがAIM(アメリカン・インディアン・ムーブメント)をつうじて、他の多くの民族に広まっている。本来はラコタ語で“イニピ”と言い、“清め”“みそぎ”を意味する。

 スウェット・ロッジは母なる大地の子宮であり、そこには命の火と、大地そのものであり私たちの最長老でもある石と、大地が与えてくださる最初の薬である水と、私たちを養ってくれる緑の人々(植物)しかない。私たちは、火と石と水と植物に感謝し、祈り、清められ、再びこの地表に生まれなおす。

 同時に、精霊はタバコ・タイを読み、唄を聞く。私たちの祈りは、石の人々をつうじて地球の反対側にも届き、聖なるパイプの煙とともに天に届く。

 夜明けごろからおよそ20人づつ、5回のスウェット・セレモニーが続けられた。パイプ・キャリヤー、サン・ダンサーが6人集まったので順々に交代で進めることができた。シンガー、ドアマン、ファイアマンも交代で役目を果 たした。私(カズ)はスウェット・ロッジの中にいたので見ていないが、最初のスウェット・セレモニーのとき、鮮やかな“逆さ虹”が出たという。

 女性で生理(清めのサイクル)に重なってしまったためにスウェット・セレモニーに参加できなかった人や子供たちも合わせて、120〜30人の人が集まってすごした2日間だった。さいわい、寒さが厳しくなかったので家の外で過ごすことができたのは、おかげだった。

 高山を出発いらい、ウォークは確実に成長している。祈りは日々、強くなっている。

 思えば、出発の時、私たちはやや後ろ向きだったのではないか。絶望の底にあるおばあさんたちに私たちの存在を知らせ、たとえビッグ・マウンテンが失われても、その精神の一部は人々に教えとして伝わっていることを知らせることで、希望をもっておばあさんたちが別 の世界に旅立てるようにという気持ちだった。

 けれども、はじめの4日間ウォークのメイン・パイプを捧げ持ったビッグ・マウンテンのティム・ソーが、離れるときに残したメッセージ「ビッグ・マウンテンに集中せよ」は、私たちが、本気で、このウォークによって強制移住を止めなければならないことを示したと思う。その結果 が、パイプとスタッフから離れることなく一団となって、必死に清内路峠を駆け抜けた5日目のウォークだったと思う。

 また、「天を仰ぎ、大地を踏みしめて歩く」という、ウォークの原点にも達することができた。私たちの一歩一歩が大地を震わせ、波動となって四方に伝わり、祈りが地球の反対側までもひろがっていく。それこそが、スピリチュアル・ウォークの原点であろう。

 そしていま、天と地と四方の精霊たちが私たちとともに歩いている。ビッグ・マウンテンめざして歩いている。日本の神々、太古の神、国つ神、天つ神も。ビッグ・マウンテンの平和のために。なぜならば、4つの肌色、黒・赤・黄・白が、天と地の間でひとつの輪をつくることこそ、グレート・スピリットの意思だからだ。
 これからますます多くの人々や精霊が、ともに歩くことだろう。

[文責:河本カズ]