1/4(火)晴れ
まだ暗い内に宿舎を出て、7:00頃、付知(つけち)町・道の駅より出発。車の窓ガラスは、凍って真っ白。とても寒い。薄い霧に覆われているようなもやが立ちこめる中、朝日が光の筋となって差し込む。そのうち霜が朝日を浴びて溶け、湯気となり、煙のように田畑や山からいたるところで立ちこめている。神々しいまばゆいまでの光で辺り一面
が包まれる中、今日もまた歩き始める。
昨晩は沖縄から1名、今日はお昼に北海道から1名が合流する。二人共ヒッチハイクで来た20代前半の男性。若い旅人が、フリー・ビッグマウンテンの想いを携えて、全国から集まって来ている。
とても暖かい一日だった。岐阜からいよいよ長野に入る。南木曽(なぎそ)の山々も美しく、ポカポカとして、ハイキング気分で気持ちいい。しかし、午前中の休憩時のサークルで、カズさんとハルから列を乱さないようにと注意が出る。ゴミ拾いに熱
中して、列から離れてしまう人が目立つようになってきたからだ。多少慣れてきて、今日のまるで春が来たかのような陽気もあって、なぜウォークをしているのか、その焦点がぼやけてきていたのかも知れない。山にゴミが落ちていると見て見ぬ
振りできないわけだが、ゴミ拾いに来ているわけではない。ビッグマウンテンがバラバラにならないように、一つになって歩く。一つの祈り、一つのウォーク。ウォーカーはワン・ハート、ワン・マインド、ワン・プレイヤーであるべき。理由はどうであろうと、隊列を離れてしまう人が出ると、祈りがばらけてしまうことに変わりない。このウォークでの祈りはただひとつ、フリー・ビッグマウンテン! 住み慣れた土地を追い出されようとしているディネ(ナバホ)とホピの人たちのために、聖地が聖地であり続けられるように、祈り、歩いている。このことを改めて確認させられた。
重要なことはシンクロする。ティムが今日を限りに、急遽アメリカに帰ることになった。昨日から膝の具合がおかしいという。インディアンはスピリチュアル・ムーブで生きている。特にティムのようなビッグマウンテンに住んでいるインディアンは、スピリットの導きのままに生きている。彼はビッグマウンテンへの日本人の祈りをサポートするために、現地は大変な時期であるにも関わらず、日本との縁あって来日してくれた。ところがポンさんへのヒーリングの祈りや、昨日も肝硬変で倒れた北海道アイヌ民族のシャーマン アシリ・レラ(山道康子)さんへの祈りを、我々は軽い気持ちでお願いしてしまった。人の病をヒーリングしたり、そこにフォーカスして祈ることは、逆にその分自分が病を受け取ることにもなりかねないとインディアンは考える。ティムはシャーマンではないので、跳ね返すすべを心得てはいない。それが膝を痛めた直接的な原因ではないにしろ、何らかの違和感を感じたのだろう。ビッグマウンテンでの緊急事態が膝の異常となって表れたのかも知れない。インディアンはアクシデントをスピリットからのサインと考えるからだ。今日は4日目、インディアンは4を聖なる数字と考える。春夏秋冬、東西南北、子供・青年・大人・老人、ほか、あらゆるサイクルは4で回ると考えている。ちょうどワン・サイクル終えて区切りも良かったのだろう。とにかく、ティムの急な帰国発表は皆に衝撃を与え、皆の祈りをビッグマウンテンに向けて一つにしてくれた。
夜のミーティングでは、昨晩は最後に地質学者でもあるカズさんによる、断層沿いにウォークしているという事に始まり、原発の事にまで及ぶ興味深い講義があったが、今晩は今日の出来事を振り返り、気持ちを新たに引き締める様々な議論が、かなり突っ込んで交わされた。
ウォークは聖なるピースパイプの先導で行われている。パイプは石で出来たボールと、木で出来たステムを合わせ、タバコを詰めた時点で、そこにはスピリットが宿ると言われている。命を産む男性と女性の結合を象徴し、天と地を結ぶ象徴でもある。ゆえに動く祭壇として、最も力のある聖なるものとして扱われている。だからウォーク中にパイプの先導から外れること、パイプを追い越すことはタブーなのだと。またパイプを持って先頭を歩く者は、パイプ(スピリット)に導かれ、動かされている。ゆえにどんなに足が早くても、それについて行かなくてはいけない。祈りのサークルで始まり、一歩一歩を祈り、祈りのサークルでその日を終える。このウォーク自体がセレモニーである。セレモニーにはセイクレッド(聖なる)・マナーがある。このマナー(ルールではない)を尊重することは、とても大切なことであるのだと。
なぜ南無妙法蓮華経を唱えているのか、という熱い議論も交わされた。カズさんはインディアンと日本山妙法寺・藤井日達上人との出会いに始まる深い縁を歴史的経緯から説明し、ボブさんはマントラとしての意味を仏教教義から説き、マサさんは旅人としての経験からマントラを船に例え、船は何でもいいんだと語った。だが最後に若いケンジロウが「僕は難しいことはよく分からないけれど、南無妙法蓮華経が、フリー・ビッグマウンテンの祈りになってればいいんじゃないかと思います。」と発言、一堂大いに納得した。
今日のウォークは、江戸時代そのままの宿場町がそっくり残っている、妻籠(つまご)宿までの全約27kmで、昨日と同じ坂下町松源地(しょうげんぢ)公会堂に再び泊まった。参加者25名。地元消防署勤務の吉村さんには、何から何までお世話になりっぱなしで、本当にありがとうございました。
汝が道にならなければ、その道を歩むことはできない。(ゴータマ・ブッダ)
歩きつづけよ!(ブッダの弟子への最後の言葉)
[文責:あきお]
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